〒212-8585 神奈川県川崎市幸区堀川町72番地34
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一般 | 無料 |
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学生 | 無料 |
一般(懇親会参加) | 3,600円 前払い |
学生(懇親会参加) | 1,800円 前払い |
テーマ:「推論」
推論は人間の知能の中核とも言える機能であるが、脳におけるその実現形態はいまだ不明である。一方で現象面では認知科学は推論について多くを明らかにしており、また人工知能(AI)ではすでに論理的・確率的な計算論が確立している。
しかし人の推論は人工知能の推論と異なるものがあるとも思われる。
ここで、人の脳における推論のメカニズムについて、脳の現象、人の行動、AIの計算論を突き合わせて議論することは、Deep Learningなどの機械学習の機能の高度化や人と類似した汎用AIの実現に有益と考える。
そこで今回の全脳アーキテクチャ勉強会は、脳、認知、AIの3方向から推論について論じていただき、その統合的理解の可能性を考える。
時間 | 内容 | 講演者 |
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17:30 | 開場 | |
18:00 | 会場説明 | |
18:10 | 開会の挨拶 | 山川宏(全脳アーキテクチャ・イニシアティブ代表) |
18:15 | 導入 | 大森隆司(玉川大学) |
18:25 | 【脳科学】前頭葉での推論 | 坂上雅道(玉川大学) |
18:55 | 【認知科学】人の推論過程 | 服部雅史(立命館大) |
19:25 | 休憩 | |
19:40 | 【人工知能】ベイジアンネット | 植野真臣(電気通信大学) |
20:10 | 導入 | 大森隆司(玉川大学) |
20:20 | ディスカッション | |
20:40 | Closing Remark | 山川 宏 (ドワンゴ人工知能研究所) |
20:45 | 終了 | |
21:00 | 懇親会 | 川崎屋‐KAWASAKIYA‐ 本店 |
意思決定とは、2つ以上の選択肢がある場合に、最適な結果をもたらすと思われる選択肢を選ぶ機能です。多くの場合、最適な結果は、最適な報酬です。したがって、意思決定に関わる脳機能の中でも、鍵となるのは価値の計算ということになります。
価値の計算に関わる神経回路は複数あることが、近年の研究からわかってきました。中でも、刺激や反応の結果もたらされる報酬をそれらに結び付ける大脳基底核の働き(モデルフリー)と、環境内の事象の時間的・空間的関係性を脳内にモデル化し、それを元に結果を予想する前頭前野の働き(モデルベース)は、人間の意思決定を理解する上で極めて重要な機能である考えられています。
これらの2つの回路は、その計算法の違いから、異なる推論に関わっていることもわかってきました。今回は、我々の研究室で行ってきた神経生理学実験の結果を紹介しながら、異なる回路で作られる異なる推論機能について考えてみます。
推論は「知」の中核的機能である。とはいえ、堅苦しい定義はその実態に似合わない。
人の推論は、意識的または無意識的に自然になされ、生活に欠かすことができない認知活動である。と同時に、人の推論にはバイアスがあり、しばしば誤る。もちろん、誤りはないに越したことはないが、そもそも「誤り」とは何か。
推論の特性を考えるとき、合理性の概念は一つのガイドラインになり、二重過程の仮説は推論の認知メカニズムについての洞察をもたらす。ところが、合理性には少なくとも二つの意味があり、二重合理性と二重過程の関係は単純ではない。両者の関係について考えを進めると、人の推論の目標多重性が明らかとなり、推論における「意識」の機能の意味が見え隠れする。
本講演では、合理性と意識性を手がかりとし、日常の事例や認知心理学の研究成果を通して、人の推論の特性、ひいては真の知性が何であるかについて、オーディエンスといっしょに考えたい。
人工知能分野における確率推論とは、多変数の同時確率分布を推定し、あるエビデンスが得られたときの各変数の条件付き周辺確率を求めることである。
同時確率分布は、それぞれの確率を 1 か 0 に制約すると論理値推論、条件付き独立性を仮定すると確率論理やベイズ推論を表現でき、最も広い表現力を持つ。
様々な最新の機械学習手法はこの同時確率分布を推定するための手法であり、近似精度と計算量のトレードオフがある。ビッグデータのように変数数が大きくなると、厳密な同時確率分布の分解であるベイジアンネットワークからそれを無向化したマルコフネットワーク、さらにその確率構造を簡易化して近似したマルコフ確率場、その確率構造をより簡易化したニューラルネットワークモデル(深層学習)へと近似精度を減じさせ、計算量が小さいモデルが相応しくなる。
本講演では、確率推論の手法と利点について解説し、さらに同時確率分布の近似精度と計算量という観点から様々な機械学習手法を俯瞰する。結果として、ニューラルネットワークモデルが計算量と近似精度をバランスよく調整し、確率推論を実用化していることを示唆する。
1990年東京工業大学大学院情報科学専攻修士課程修了。1993年東京大学大学院情報科学専攻博士課程修了。博士(理学)。同年電子技術総合研究所(2001年より産業技術総合研究所)入所。プログラミング言語、ソフトウエア工学の研究に従事。2005年より計算論的神経科学の研究に従事。
1987年3月東京理科大学理学部卒業。1992年東京大学で神経回路による強化学習モデル研究で工学博士取得。同年(株)富士通研究所入社後、概念学習、認知アーキテクチャ、教育ゲーム、将棋プロジェクト等の研究に従事。フレーム問題(人工知能分野では最大の基本問題)を脳の計算機能を参考とした機械学習により解決することを目指している。
東京大学で、ウェブと人工知能、ビジネスモデルの研究を行っています。 ウェブの意味的な処理を人工知能を使って高度化すること、人工知能のブレークスルーをウェブデータを通じて検証することを目指しています。
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人間の脳全体構造における知的情報処理をカバーできる全脳型 AI アーキテクチャを工学的に実現できれば、人間レベル、さらにそれ以上の人工知能が実現可能になります。これは人類社会に対して、莫大な富と利益をもたらすことが予見されます。例えば、検索や広告、自動翻訳や対話技術、自動運転やロボット、そして金融や経済、政治や社会など、幅広い分野に大きな影響を与えるでしょう。
私達は、この目的のためには、神経科学や認知科学等の知見を参考としながら、機能的に分化した脳の各器官をできるだけ単純な機械学習器として解釈し、それら機械学習器を統合したアーキテクチャを構築することが近道であると考えています。
従来において、こうした試みは容易ではないと考えられてきましたが、状況は変わりつつあります。すでに、神経科学分野での知見の蓄積と、計算機速度の向上を背景に、様々な粒度により脳全体の情報処理を再現/理解しようとする動きが欧米を中心に本格化しています。 また Deep Learning などの機械学習技術のブレークスルー、大脳皮質ベイジアンネット仮説などの計算論的神経科学の進展、クラウドなどの計算機環境が充実してきています。
こうした背景を踏まえるならば、全脳型 AI アーキテクチャの開発は世界的に早々に激化してくる可能性さえあります。 そこで私達は、2020年台前半までに最速で本技術を実現できるロードマップを意識しながら、この研究の裾野を広げていく必要があると考えています。 そしてこのためには、情報処理技術だけでなく、ある程度のレベルにおいて神経科学等の関連分野の知見を幅広く理解しながら、情熱をもってこの研究に挑む多くの研究者やエンジニアの参入が必要と考えています。
全脳アーキテクチャ勉強会は、人間のように柔軟汎用な人工知能の実現に興味のある研究者、脳に興味のあるエンジニア、関連分野(神経科学、認知科学等)の研究者間での交流を促進し、全脳アーキテクチャを実現するために発足されました。 2018年6月以降のイベント ⇒ https://wba-meetup.connpass.com 主催:全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
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