東京都文京区後楽1丁目4-18
全脳アーキテクチャ(WBA)・アプローチによる汎用人工知能の構築においては,脳における多様な学習能力に対する理解にもとづいて,機械学習を結合して認知アーキテクチャとして実装してゆきます.
WBAアプローチからのシステム構築においては,アーキテクチャの設計と,その中にあるモジュールの機械学習に分離しようとしている.対して生物においては,進化で獲得した部分がアーキテクチャに対応し,成人があらたな技能や知識を獲得することは学習に対応するでしょう.
しかしながら生物においてはその中間的な位置づけとして,発達という段階が存在し,そこではある程度想定された環境において,比較的定型的なかたちで能力を獲得しているともいえます.WBAは複数の機械学習が結合されたシステムであるため,これは機械学習の観点からみればモジュールをどういったスケジュールで学習すべきか(カリキュラム学習)といった問題にも関わります.
本勉強会においては,川合伸幸氏からは進化の観点から,岡田浩之氏からは発達の観点からご講演をいただき,その後に中村友昭氏を交えて機械学習の観点からパネルディスカションを行います.
NPO法人WBAIのウェブページに掲載する本勉強会の報告書作成にご協力いただくレポーターを開催5日前まで募集しております。(分量は1講演あたり1ページ程度であり,ドワンゴ人工知能研究所所長山川宏氏と共著となります)。
参考としてこれまでのレポートはドワンゴ人工知能研究所のテクニカル・レポートとして発行しております。
満席の場合でも勉強会の協力参加者として出席できますので、ご協力をいただける方は本ページのお問い合わせよりご連絡ください。
ニコニコ動画にて生放送する予定です。
http://live.nicovideo.jp/gate/lv265950124
事前に「タイムシフト予約」をしておくと、講演から1週間閲覧可能になります。
※配信環境によって放送が途切れる場合がございます。予めご了承ください。
18:10-19:00 「ヒトの知性の進化」 川合伸幸(名古屋大学)
動物は環境の変化に合わせて、自分の行動を変容させますが、同じことが繰り返されると、事前に環境に合わせた行動をとることができるようになります。強化学習といわれるこの単純な学習は、無脊椎動物でもみられます。しかし、学習したこと(知識)を、自由にあらゆる状況で発揮できるわけではなく、身体を自動的に制御する機構の制約を受けて、学習したことが遂行できないことがあります。このような現象は、ほ乳類のラットでさえ見られます。
霊長類ともなれば小学校低学年に比肩するほどの知的な学習をしますが、教えられたことを学習するに留まり、得られた知識から新たな問題を解決する推論の能力は限られています。ヒトと比べれば教えられていない問題を解く能力は制限があります。
しかし、霊長類やカラスなどは、「ここに無いもの」を使って問題を解決することができます。道具の製作と使用です。チンパンジーやカラスは、いくつかの部品を組み合わせたメタ道具を作ることもできます。このような能力の源泉には想像力が必要です。想像力を観察することはできませんが、その発露ともいえる「見立て」は、ヒトではごく幼い頃から見られます。いま・そこに・あるもの・から離れた自由な想像にもとづいて創造が行われるのです。
ヒトとほかの動物の知識でもっとも異なるところは、知識の伝承です。ヒトは言語を使用する前から、技を伝承してきました。すなわち文化が蓄積されてきたのです。このことにより、獲得した知識が一世代で消滅するのではなく、伝承することに蓄積され、しかも後進は最初から学習する必要は無く、すでに体系づけられた知識や技を、他者から効率よく学ぶことが可能で、そのことにより、さらに知識が飛躍的に高まります。Google Scholarでおなじみの「巨人の肩に立つ」は、それまで知識に立脚して自身の学問を展開したニュートンが、先人の業績に対して敬意を払って述べた言葉です。
AIによって、他人から学ぶシステムを作ることはできるかもしれません。しかし、わたしたちは発達ともに学び合う存在となり、そして教える立場にも立つのです。そのような役割の転換があって、はじめて知識を伝承すること可能で、そのことによって蓄積された知識がわたしたちヒトを知的な存在としているのです。
19:00-19:15 休憩
19:15-19:20 創設賛助会員プレゼン 「最近の対話テクノロジーとNextremerの取り組み」株式会社Nextremer
今回は株式会社Nextremerの古川朋裕様からプレゼンをいただきます。
19:20-20:05 「発達する知能 -ことばの学習を可能にする能力―」 岡田浩之(玉川大学)
言葉の獲得は抽象的で概念レベルの複雑な情報に意味を与える高次の知覚過程であり、人間の認知過程の重要な要素の一つである。この高次の知覚過程により、漠然とした環境情報は心的表象へと組織化されていく、さらには言葉になる考える。
しかしこれまでの人工知能研究はこの高次の知覚過程を無視し、既成の表象を予め作ることで対処しようとし、人間の認知過程の理解という点ではことごとく失敗してきた(Hofstadter, 1992)。同様に認知科学研究においても、当初は知覚的な認識論が主流であったが、人工知能や計算科学、脳科学などの影響により、認識論の主流は非身体的、非知覚的なものとなり、知覚的な認識論の立場は失われていった(Barsalou,1999)。
しかし多様な媒体の処理がある程度できるようになってきた現在,それらの限界を超えた議論が可能になったと考えられる.
発表では非知覚的な認識論が抱える問題にとらわれることなく、複雑で外乱に富んだ実世界から得られる情報に関して、十分に機能的な概念形成システムを目指した知覚的シンボルシステムの実現に向けた議論を行いたい。
特に、音象徴性(音と意味の間の関係)と対称性推論に注目し、記号としてのことばと意味を結び付ける最初の足がかりとなっている可能性を示唆する。
20:10-21:30 パネル討論:「 汎用人工知能に発達は必要か?」
21:30 - 23:00 懇親会(自由参加)
1990年東京工業大学大学院情報科学専攻修士課程修了。1993年東京大学大学院情報科学専攻博士課程修了。博士(理学)。同年電子技術総合研究所(2001年より産業技術総合研究所)入所。プログラミング言語、ソフトウエア工学の研究に従事。2005年より計算論的神経科学の研究に従事。
1987年3月東京理科大学理学部卒業。1992年東京大学で神経回路による強化学習モデル研究で工学博士取得。同年(株)富士通研究所入社後、概念学習、認知アーキテクチャ、教育ゲーム、将棋プロジェクト等の研究に従事。フレーム問題(人工知能分野では最大の基本問題)を脳の計算機能を参考とした機械学習により解決することを目指している。
東京大学で、ウェブと人工知能、ビジネスモデルの研究を行っています。 ウェブの意味的な処理を人工知能を使って高度化すること、人工知能のブレークスルーをウェブデータを通じて検証することを目指しています。
人間の脳全体構造における知的情報処理をカバーできる全脳型AIアーキテクチャを工学的に実現できれば、人間レベル、さらにそれ以上の人工知能が実現可能になります。これは人類社会に対して、莫大な富と利益をもたらすことが予見されます。例えば、検索や広告、自動翻訳や対話技術、自動運転やロボット、そして金融や経済、政治や社会など、幅広い分野に大きな影響を与えるでしょう。
私達は、この目的のためには、神経科学や認知科学等の知見を参考としながら、機能的に分化した脳の各器官をできるだけ単純な機械学習器として解釈し、それら機械学習器を統合したアーキテクチャを構築することが近道であると考えています。
従来において、こうした試みは容易ではないと考えられてきましたが、状況は変わりつつあります。すでに、神経科学分野での知見の蓄積と、計算機速度の向上を背景に、様々な粒度により脳全体の情報処理を再現/理解しようとする動きが欧米を中心に本格化しています。 またDeep Learning などの機械学習技術のブレークスルー、大脳皮質ベイジアンネット仮説などの計算論的神経科学の進展、クラウドなどの計算機環境が充実してきています。
こうした背景を踏まえるならば、全脳型AIアーキテクチャの開発は世界的に早々に激化してくる可能性さえあります。 そこで私達は、2020年台前半までに最速で本技術を実現できるロードマップを意識しながら、この研究の裾野を広げていく必要があると考えています。 そしてこのためには、情報処理技術だけでなく、ある程度のレベルにおいて神経科学等の関連分野の知見を幅広く理解しながら、情熱をもってこの研究に挑む多くの研究者やエンジニアの参入が必要と考えています。
全脳アーキテクチャ勉強会は、人間のように柔軟汎用な人工知能の実現に興味のある研究者、脳に興味のあるエンジニア、関連分野(神経科学、認知科学等)の研究者間での交流を促進し、全脳アーキテクチャを実現するために発足されました。 2018年6月以降のイベント ⇒ https://wba-meetup.connpass.com 主催:全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
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