〒135-0063 東京都江東区有明3丁目5番1号
深層学習がはじめてその威力を示し始めた2012年から数年の間,その優位性はパターン認識に留まるようにみえました.しかし2016年現在,深層学習周辺の機械学習技術の研究対象は、時系列,注意,記憶,推論,マルチモダル等を含むものに拡大し,さらには認識と行動を繋いだ認知アーキテクチャにおいてEnd-to-End学習を行う能力も持ち始めています.こうして専門家の想像すら超えて進歩し続けている理由は,やはりAIの本質的問題が深層学習により大きく切り崩されたからと思わざるをえないでしょう.
人間並みの知能を持つAIの実現に向けて,残された主要課題は何なのでしょうか.恐らく,センサ情報にグラウンディングした真の言語理解や,獲得した複数の知識を組合せて柔軟な問題解決を行う汎用性の能力でしょう.しかしこれらについても,深層学習を発展させることで一定の成果が出始めているように見えます.さらには,AIに対する投資が増大しつつ,新しいアルゴリズムが次々とコモディティ化されることが,人類全体での共同開発を促進しているようです.こうした状況から,残された課題が比較的早期に突き崩される可能性すらあるでしょう.
一方で私達NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI)でも,その周辺の研究として,学習環境シミュレータを用いたハッカソン,オープンプラットフォーム検討の進展,原型となるWBA,コネクトーム上で認知アーキテクチャの活動をモニタするツール,情動モデルの検討,Master Algorithm Framework構想の検討などに進展がありました.
そこで今回,全脳アーキテクチャの活動が第4期に入ったことを宣言し,「加速する人工知能,加速する世界」をテーマに,来る5月18日(水) 午後に,初めてのシンポジウムを開催いたします.ここでは全脳アーキテクチャの主要メンバにより,最近のAIの進展と,WBA研究の進展.さらに今後のWBAIの戦略についてのパネル討論などを行うことで,更に大きなムーブメントへと発展する足がかりとしたいと思います.
【全脳アーキテクチャーの発展】
第0期: 2013年夏~2013年11月 一杉,松尾,山川で議論
初回WBA勉強会
第1期: 2013年12月~2014年8月 勉強会の拡大期
若手の会結成
第2期: 2014年9月~2015年8月 体制構築期
NPO法人WBAI創設
第3期: 2015年9月~2016年3月 萌芽的開発期
学習環境シミュレーション/WBAの原型モデル/コネクトームの活用
第4期: 2016年4月~ これからの加速期
後 援:産業技術総合研究所AIセンター、国立情報学研究所、QBiC 生命システム研究センター 理化学研究所、株式会社ドワンゴ
同日、第14回全脳アーキテクチャ勉強会も開催しています。よろしければご参加下さい。https://wba-meetup.doorkeeper.jp/events/43496
下記URLからニコニコ動画にて生放送します。事前に「タイムシフト予約」をしておくと、講演から1週間閲覧可能になります。
http://live.nicovideo.jp/gate/lv262776212
※配信環境によって放送が途切れる場合がございます。予めご了承ください。
司会進行:坂井美帆
* プログラム委員長 山川宏
* 実行委員長 生島高裕
* 会場担当 川村正春,上野聡
* 広報担当 坂井美帆
* 渉外担当 坂井美帆
* 撮影担当 門前一馬
* ポスター制作 門前一馬
* ニコ生中継 清水俊博,荒木真一
1990年東京工業大学大学院情報科学専攻修士課程修了。1993年東京大学大学院情報科学専攻博士課程修了。博士(理学)。同年電子技術総合研究所(2001年より産業技術総合研究所)入所。プログラミング言語、ソフトウエア工学の研究に従事。2005年より計算論的神経科学の研究に従事。
1987年3月東京理科大学理学部卒業。1992年東京大学で神経回路による強化学習モデル研究で工学博士取得。同年(株)富士通研究所入社後、概念学習、認知アーキテクチャ、教育ゲーム、将棋プロジェクト等の研究に従事。フレーム問題(人工知能分野では最大の基本問題)を脳の計算機能を参考とした機械学習により解決することを目指している。
東京大学で、ウェブと人工知能、ビジネスモデルの研究を行っています。 ウェブの意味的な処理を人工知能を使って高度化すること、人工知能のブレークスルーをウェブデータを通じて検証することを目指しています。
人間の脳全体構造における知的情報処理をカバーできる全脳型AIアーキテクチャを工学的に実現できれば、人間レベル、さらにそれ以上の人工知能が実現可能になります。これは人類社会に対して、莫大な富と利益をもたらすことが予見されます。例えば、検索や広告、自動翻訳や対話技術、自動運転やロボット、そして金融や経済、政治や社会など、幅広い分野に大きな影響を与えるでしょう。
私達は、この目的のためには、神経科学や認知科学等の知見を参考としながら、機能的に分化した脳の各器官をできるだけ単純な機械学習器として解釈し、それら機械学習器を統合したアーキテクチャを構築することが近道であると考えています。
従来において、こうした試みは容易ではないと考えられてきましたが、状況は変わりつつあります。すでに、神経科学分野での知見の蓄積と、計算機速度の向上を背景に、様々な粒度により脳全体の情報処理を再現/理解しようとする動きが欧米を中心に本格化しています。 またDeep Learning などの機械学習技術のブレークスルー、大脳皮質ベイジアンネット仮説などの計算論的神経科学の進展、クラウドなどの計算機環境が充実してきています。
こうした背景を踏まえるならば、全脳型AIアーキテクチャの開発は世界的に早々に激化してくる可能性さえあります。 そこで私達は、2020年台前半までに最速で本技術を実現できるロードマップを意識しながら、この研究の裾野を広げていく必要があると考えています。 そしてこのためには、情報処理技術だけでなく、ある程度のレベルにおいて神経科学等の関連分野の知見を幅広く理解しながら、情熱をもってこの研究に挑む多くの研究者やエンジニアの参入が必要と考えています。
全脳アーキテクチャ勉強会は、人間のように柔軟汎用な人工知能の実現に興味のある研究者、脳に興味のあるエンジニア、関連分野(神経科学、認知科学等)の研究者間での交流を促進し、全脳アーキテクチャを実現するために発足されました。 2018年6月以降のイベント ⇒ https://wba-meetup.connpass.com 主催:全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
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